漢詩「病中偶吟」(五言排律)

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●原文:

 病中偶吟  玄齋 佐村 昌哉  大阪市

幾 臻 天 疾 苦  難 飮 一 杯 茶

謝 病 平 生 事  憂 今 漫 詠 嗟

氣 衰 山 肅 殺  葉 落 朶 橫 斜

服 藥 窗 中 影  怯 寒 瓶 裏 花

爐 邊 休 息 重  燈 下 筆 翰 加

起 臥 如 詩 就  何 年 勝 景 賖


●書き下し文:

 題:「病中(びやうちゆう) 偶吟(ぐうぎん)」

幾(いく)たびか臻(いた)る天疾(てんしつ)の苦(く)
飮(の)むこと難(かた)し一杯(いつぱい)の茶(ちや)

病(やまひ)と謝(しや)す平生(へいぜい)の事(こと)
今(いま)を憂(うれ)ふ漫詠(まんえい)の嗟(なげ)き

氣(き) 衰(おとろ)へて山(やま) 肅殺(しゆくさつ)
葉(は) 落(お)ちて朶(えだ) 橫斜(わうしや)

藥(くすり)を服(ふく)す窗中(さうちゆう)の影(かげ)
寒(さむ)さを怯(おそ)る瓶裏(へいり)の花(はな)

爐邊(ろへん) 休息(きうそく) 重(おも)んじ
燈下(とうか) 筆翰(ひつかん) 加(くは)ふ

起臥(きが) 如(も)し詩(し) 就(な)らば
何(いづ)れの年(とし)か勝景(しようけい) 賖(はる)かなりと

「飮」の新字体は「飲」、「氣」の新字体は「気」、「肅」の新字体は「粛」、「橫」の新字体は「横」、「藥」の新字体は「薬」、「窗」の新字体は「窓」、「爐」の新字体は「炉」、「邊」の新字体は「辺」、「燈」の新字体は「灯」
「病(やまひ)」の新仮名遣いは「病(やまい)」
「憂(うれ)ふ」の新仮名遣いは「憂(うれ)う」
「衰(おとろ)へて」の新仮名遣いは「衰(おとろ)えて」
「橫(わう)」の新仮名遣いは「橫(おう)」
「窗(さう)」の新仮名遣いは「窗(そう)」
「休(きう)」の新仮名遣いは「休(きゆう)」
「加(くは)ふ」の新仮名遣いは「加(くわ)う」
「何(いづ)れの」の新仮名遣いは「何(いず)れの」


●現代語訳:

 題:「病気の中でふと感興が湧いて詠んだ漢詩です」

何度か先天的な病気の苦しみがやって来て、
 一杯の茶を飲むことが難しいことがありました。

 病気にかこつけて普段の来客が来ることを断り、
 今の状況を心配して濫りにその嘆きを漢詩に吟じていました。

 万物が育つための根源の力が衰えて、山は草木を枯らす厳しい秋の気候になり、
 木の葉は落ちて、枝は横たわり斜めになっていました。

 薬を服用する窓の中の影のような私の姿があり、
 寒さを恐れる花瓶の中の花がありました。

 囲炉裏の傍では、休むことを重んじて、
 灯火の下では、筆で文字を書くということを加えるようになりました。

 寝たり起きたりの日々の生活の中で、もし、漢詩が出来るとすれば、
 いつの年にか遥か遠くの優れた景色を見ることが出来るのかということについてです。

●語注:

(『新字源』は1994年(平成六年)の改訂版のものを引用しています。)

※偶吟(ぐうぎん):「ふと感興がわいてよんだ詩歌。」(『新字源』P73)

※天疾(てんしつ):「先天的疾病。」(『漢語大詞典(かんごだいしてん)』(Web サイト『搜韻(そういん)』の「典故(てんこ)、詞彙(しい)」の「天疾(てんしつ)」の検索結果< http://sou-yun.com/QueryAllusion.aspx >(リンクを防止するため、「:(コロン)」は全角にしています。)(アクセス日:平成二十八年十月十五日(土))))
※謝病(しやびよう(しやびやう))(小書き文字を使うと「しゃびょう」)(病(やまい(やまひ))と謝(しや)(小書き文字を使うと「しゃ」)す):「托病引退或謝絶賓客。」(『漢語大詞典(かんごだいしてん)』(Web サイト『搜韻(そういん)』の「典故(てんこ)、詞彙(しい)」の「謝病」の検索結果< http://sou-yun.com/QueryAllusion.aspx >(リンクを防止するため、「:(コロン)」は全角にしています。)(アクセス日:平成二十八年十月十五日(土))))、つまり、「病気にかこつけて引退する、あるいは来客を断る。」ことです。

※謝絶(しやぜつ)(小書き文字を使うと「しゃぜつ」):「ことわる。」(『新字源』P941)

※平生(へいぜい):「日ごろ。ふだん。つねづね。平常。」(『新字源』P322)

※粛殺(肅殺)(しゆくさつ)(小書き文字を使うと「しゅくさつ」):「秋の気候がきびしくて草木をからすこと。」(『新字源』P814)

※気(氣)(き):「万物が育つための根源力。」(『新字源』P552、「気」の文字の⑨番)

※横斜(橫斜)(おうしや(わうしや)):「横たわりななめになる。」(『新字源』P521)

※休息(きゆうそく(きうそく))(小書き文字を使うと「きゅうそく」):「やすむ。いこう。」(『新字源』P49)

※筆翰(ひつかん)(小書き文字を使うと「ひっかん」):①「ふで。」②「文字を書くこと。」(『新字源』P752)


●解説:

 今回は、病気の中でふと感興が湧いて出来た五言排律の漢詩です。

 最近は何日か苦しい日があって、その時のことを漢詩にしています。苦しい時にはお茶を飲むのも困難な時もあり、来客も断るような中、一人で漢詩を詠み、文字を書くという形で日を過ごす時がよくあります。秋になって草木が枯れて葉が落ちる季節にもなって来て、そんな中で病人として過ごすのは寂しいものがあります。こういう日には漢詩を作って遥か遠くの美しい景色を思いやるのが良いのではと思いました。こうした気持ちを少しは元気になった中で思い返して漢詩を作っていました。

 こういう病気の中でも、可能な努力は続けていき、少しでも元気になった時にはよりしっかりと努力をしていく、そんな風に過ごしていければ良いなと思います。これからも体調に気を付けてしっかりと頑張っていきます。


佐村 昌哉(筆名:白川 玄齋)

この記事へのコメント

  • 美舟

    Facebookの方で拝見してコメントはさせて頂いていたのですがね。
    素晴らしいというか、なんだかじ〜んと目頭が・・・
    今は体調は如何でございますか?
    くれぐれもご無理なさらずにお願い致しますね。
    季節の変わり目はどうしても体調を崩しがちになる場合もございます。
    お気をつけ下さいませ。
    素晴らしいお作品をこれからも楽しみにしております。
    ますますのご活躍を期待しております。
    2016年10月19日 17:05
  • 佐村 昌哉(筆名:白川 玄齋)

    > 美舟さん

    こんばんは。温かいコメントをありがとうございます。

    今はずいぶんとましになりました。
    外来での診察の結果は変化は無かったのでほっとしています。
    季節の変わり目で一時期寒くなって来た時に、
    少し体調の変化があったようです。
    今はましになっていますので、気を付けて過ごしていきます。

    体調の悪い時に観察したこと、考えていたことを、
    少し体調が持ち直した時に漢詩にする、
    このように過ごしていくと良い気晴らしになることに気付かされます。

    とはいえ漢詩を作るためには少しは元気であることが必要ですので、
    引き続き気を付けて過ごしていきます。

    秋の物寂しい風景の中では気分も塞ぎがちになりますが、
    そんな中でもいろんな観察や記憶を思い返す中で
    漢詩を作っていければ良いなと思います。
    もう少し明るい気持ちで過ごしていこうと思います。

    美舟さんも良い木曜日の夜をお過ごし下さい。
    2016年10月20日 19:10