漢詩「越冬準備」(七言律詩)

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●原文:

 越冬準備  玄齋 佐村 昌哉  大阪市

準 備 冬 時 安 謐 祈  漸 來 新 雪 遠 山 微

通 年 吟 詠 天 災 事  當 月 行 尋 政 局 機

論 難 議 員 持 熱 氣  窮 途 貧 士 補 粗 衣

苦 辛 常 信 存 明 日  颺 颺 落 楓 殊 外 緋


●書き下し文:

 題:「越冬(ゑつとう) 準備(じゆんび)」

冬時(とうじ)に準備(じゆんび)して安謐(あんひつ) 祈(いの)り
漸(やうや)く來(きた)る新雪(しんせつ) 遠山(ゑんざん) 微(び)なり

通年(つうねん) 吟詠(ぎんえい)す天災(てんさい)の事(こと)
當月(たうげつ) 行(ゆくゆく) 尋(たづ)ぬ政局(せいきよく)の機(き)

難(なん)を論(ろん)ずる議員(ぎゐん) 熱氣(ねつき)を持(ぢ)し
途(みち)に窮(きゆう)する貧士(ひんし) 粗衣(そい)を補(おぎな)ふ

苦辛(くしん) 常(つね)に明日(あす)を存(そん)するを信(しん)じ
颺颺(やうやう)たる落楓(らくふう) 殊(こと)の外(ほか) 緋(あか)し

「來」の新字体は「来」、「當」の新字体は「当」、「氣」の新字体は「気」
「遠(ゑん)」の新仮名遣いは「遠(えん)」
「當(たう)」の新仮名遣いは「當(とう)」
「尋(たづ)ぬ」の新仮名遣いは「尋(たず)ぬ」
「員(ゐん)」の新仮名遣いは「員(いん)」
「持(ぢ)し」の新仮名遣いは「持(じ)す」
「補(おぎな)ふ」の新仮名遣いは「補(おぎな)う」
「颺(やう)」の新仮名遣いは「颺(よう)」


●現代語訳:

 題:「冬を過ごす用意をする情景を漢詩に詠みました」

 冬の季節に用意をして、安らかで静かであるようにと祈り、
 次第に新しく雪が降り積もって来て、遠くの山が微かに見えていました。

 一年を通じて、声を上げて歌った詩歌は自然に起る災いのことについてであり、
 今月に道の途中で尋ねたのは、政治の有様の時機についてです。

 相手の誤りや欠点を論じて非難する議員は熱気を帯びていて、
 苦しい境遇の中で、生活の苦しい人は粗末な着物の綻びを縫っていました。

 苦しい中でも、常に明日があることを信じていて、
 風に吹き上げられて翻る、落葉した楓の葉は、格別に赤いのです。


●語注:

※越冬(えつとう(ゑつとう))(小書き文字を使うと「えっとう」):「冬を過ごすこと。冬の寒さを越すこと。」(Web サイト『goo国語辞書』の「越冬」の検索結果< http://dictionary.goo.ne.jp/jn/24296/meaning/m0u/ >(アクセス日:平成二十八年十月二十二日(土)))

※準備(じゆんび)(小書き文字を使うと「じゅんび」):「したくする。用意する。予備。」(『新字源』P600)

※冬時(とうじ):「冬季。」(『大漢語詞典』(Web サイト『搜韻(そういん)』の「典故(てんこ)、詞彙(しい)」の「冬時」の検索結果< http://sou-yun.com/QueryAllusion.aspx >(リンクを防止するために、「:(コロン)」は全角にしています。)(アクセス日:平成二十八年十月二十二日(土))))

※冬季(とうき):「冬の季節。冬のシーズン。冬。」(Web サイト『goo国語辞書』の「冬季」の検索結果< http://dictionary.goo.ne.jp/jn/155304/meaning/m0u/ >(アクセス日:平成二十八年十月二十二日(土)))

※安謐(あんひつ):「安らかで静かなこと。」(『新字源』P671)

※新雪(しんぜつ):「新しく降り積もった雪。」(Web サイト『goo国語辞書』の「新雪」の検索結果< http://dictionary.goo.ne.jp/jn/1114798/meaning/m0u/ >(アクセス日:平成二十八年十月二十二日(土)))

※通年(つうねん):「一年間を通して数えること。また、一年じゅう行うこと。」(Web サイト『goo国語辞書』の「通年」の検索結果< http://dictionary.goo.ne.jp/jn/146387/meaning/m0u >(アクセス日:平成二十八年十月二十二日(土)))

※吟詠(ぎんえい):「声を上げて詩歌をうたう。」(『新字源』P170)

※天災(てんさい):「自然に起る災い。天の神が降すと考えて天災〔てんさい〕という。」(『新字源』P241)

※当月(當月)(とうげつ(たうげつ)):①「今月。本月。」②「あることがあった、その月。」(Web サイト『goo 国語辞書』の「当月」の検索結果< http://dictionary.goo.ne.jp/jn/155573/meaning/m0u/ >(アクセス日:平成二十八年十月二十二日(土)))、ここでは②の意味で用いています。

※行(ゆくゆく):「みちすがら。」(『新字源』P896)

※道(みち)すがら:「道を行きながら。道の途中で。みちみち。」(Web サイト『goo国語辞書』の「みちすがら」の検索結果< http://dictionary.goo.ne.jp/jn/212234/meaning/m0u/ >(アクセス日:平成二十八年十月二十二日(土)))

※政局(せいきよく)(小書き文字を使うと「せいきょく」):「政権をもっている者の安定・不安定などのそのときのありさま。」(『新字源』P438)

※論難(ろんなん)(難(なん)を論(ろん)ず):「相手の誤り・欠点などを論じて非難すること。」(Web サイト『goo国語辞書』の「論難」の検索結果< http://dictionary.goo.ne.jp/jn/237210/meaning/m0u/ >(アクセス日:平成二十八年重圧二十二日(土)))

※窮途(きゆうと)(小書き文字を使うと「きゅうと」)(途(みち)に窮(きゆう)(小書き文字を使うと「きゅう」)す):「行きづまりの道。転じて苦しい境遇。特に仕官に道を得ないこと。」(『新字源』P743)

※貧士(ひんし):「窮人。」(Web サイト『漢典(かんてん)』の「貧士」の検索結果< http:// www.zdic.net/c/b/1b/40800.htm >(リンクを防止するために、「:(コロン)」は全角にしています。)(アクセス日:平成二十八年十月二十二日(土)))

※窮人(きゆうじん)(小書き文字を使うと「きゅうじん」):「生活の苦しい人。」(『新字源』P743)

※補(ほ)(補(おぎな)う(補(おぎな)ふ)):「つくろう。衣服のほころびをぬう。」

※苦辛(くしん):「くるしむ。苦しみ。」(『新字源』P848)

※颺颺(ようよう(やうやう)):「風にふきあげられて、ひるがえるさま。」(『新字源』P1112)

※殊(こと)の外(ほか):ここでは、「程度が際立っているさま。格別。とりわけ。」(Webサイト『goo国語辞書』の「殊の外」の検索結果< http://dictionary.goo.ne.jp/jn/80639/meaning/m0u/ >(アクセス日:平成二十八年十発二十二日(土)))


●解説:

 今回は、冬を過ごす用意をする情景を、七言律詩の漢詩にしました。

 この七言律詩は、漢詩の会の浪速菅廟吟社(なにわかんびょうぎんしゃ)の課題詩である七言絶句の部分、一句目・二句目・七句目・八句目の七言絶句の部分を先に作り、更に三句目・四句目、五句目・六句目の二組の語呂合わせの句である対句を作って組み合わせたものです。

 今年一年は台風や地震といった自然災害を漢詩にすることが多く、そんな自然災害がつい最近にも鳥取での地震という形で起こり、そんな中でも政治の世界も様々に騒がしい、そんな多事多難な日々が続いています。粗末な衣服の綻びを縫うような生活をしている私にとっては、今の政治の世界で相手の欠点を非難する姿を見ることが多く、なかなか実際の本題に入っていかないことを見るのは、何とも歯がゆいものです。

(ブログの中では具体的な政治の物事への言及をすることは避けています。)

普段の会話の中では政治の話と宗教の話を必要が無い限り避けるということをマナーとしている私としては、世の中がどうあろうとも私自身の努力を続けていこうと思ったということを漢詩にしてみました。努力している限りは、明日は何とかやって来る、落ちた楓の葉が格別に赤いように、苦しい状況にいる私も私自身の努力をきちんと重ねていくことが出来れば、少しはましな人間として生きていける、そう信じながら、自宅での治療が続く中でも頑張っていきます。


佐村 昌哉(筆名:白川 玄齋)

この記事へのコメント

  • 美舟

    政治と宗教の話は必要がない限り避けるマナー。
    私も同じです。
    よほどのことがない限り、あまり触れようとは思いません。
    個々それぞれお考えがありますものね〜
    考えがあると論争になりかねないのがこの手の話になってくるでしょうか。
    なので、やはり私は芸術とかの話をメインにされる方が好きです。
    こうして、漢詩のお話や芸術関係のお話をしていると、癒されます!(笑)

    しかしでも少しは言いたくなりますよね・・・
    今の世の中、歯がゆいことが多いですよ。
    今回は鳥取地震、被害を受けている方も多いです。
    それに景気回復なんて感じることすらないのに、なんだか景気回復してる・・・的な政治家の話とか。
    もっとスムーズにいく方法があるのでは?なんて思ってしまいます。

    まあ、でも国民の意見がどのくらい通るかなんてこと考えるとゾッとします。
    なので、ここはしっかり自分を持ち精進していけたらなと思います。

    本当にいつも素晴らしいお作品、そして解説、勉強になります。
    次回のお作品も楽しみにしております。
    2016年10月22日 23:01
  • 佐村 昌哉(筆名:白川 玄齋)

    > 美舟さん

    おはようございます。温かいコメントをありがとうございます。

    はい。政治の話はどんな方がどんな考え方でいるのかが
    あらかじめ分からないことが多いですので、
    避けるのが無難だと日々思います。

    漢詩や芸術の話題は害が無くて楽しいですね。

    選挙の時は毎回真剣に投票する候補者を選びますが、
    それを通じて私たち国民の意見がどれほど反映されているのか、
    それを考えると恐ろしいものがありますね。
    選挙が終われば終わりなのかなと思う時もあります。

    景気回復、それを実感している人とそうでない人、
    こういう区別がいろんな場面で出てこないと良いなと思います。
    そんな苦しい中でもしっかりと頑張っていかなければ、
    そんな風に思って漢詩を作っています。
    風に翻る楓の落ち葉が格別に赤いように、
    どんな中でも正しい気持ちを保って過ごせると良いなと思います。
    そのためにも自宅での治療が続く中でも努力を重ねていきます。

    美舟さんも良い日曜日の一日をお過ごし下さい。
    2016年10月23日 09:14