漢詩「晩春偶成」(七言律詩)

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●原文:

 晩春偶成  玄齋 佐村 昌哉  大阪市

老 櫻 殘 日 餞 徂 春  襟 裏 暫 留 詩 卷 親

幾 片 飄 紅 時 欲 去  千 枝 繁 綠 影 將 匀

徒 求 實 用 窮 途 者  漸 得 寸 功 勞 苦 人

握 齪 平 生 看 窗 外  誰 知 何 物 未 成 塵


●書き下し文:

 題:「晩春(ばんしゆん) 偶成(ぐうせい)」

老櫻(らうあう) 殘日(ざんじつ) 徂春(そしゆん)を餞(せん)し、
襟裏(きんり) 暫(しばら)く留(とど)む詩卷(しくわん)に親(した)しむを。

幾片(いくへん)の紅(くれなゐ)を飄(ひるがへ)して時(とき) 去(さ)らんと欲(ほつ)し、
千枝(せんし) 綠(みどり)を繁(しげ)らせて影(かげ) 將(まさ)に匀(ととの)はんとす。

徒(いたづら)に實用(じつよう)を求(もと)むる窮途(きゆうと)の者(もの)にして、
漸(やうや)く寸功(すんこう)を得(う)る勞苦(らうく)の人(ひと)なり。

握齪(あくさく)する平生(へいぜい) 窗外(さうぐわい)を看(み)れば、
誰(たれ)か知(し)らん何物(なにもの)か未(いま)だ塵(ちり)と成(な)らざるを。

「櫻」の新字体は「桜」、「殘」の新字体は「残」、「卷」の新字体は「巻」、「綠」の新字体は「緑」、「將」の新字体は「将」、「實」の新字体は「実」、「勞」の新字体は「労」、「窗」の新字体は「窓」
「老櫻(らうあう)」の新仮名遣いは「ろうおう」
「卷(くわん)」の新仮名遣いは「かん」
「紅(くれなゐ)」の新仮名遣いは「くれない」
「飄(ひるがへ)して」の新仮名遣いは「飄(ひるがえ)して」
「匀(ととの)はんとす」の新仮名遣いは「匀(ととの)わんとす」
「勞(らう)」の新仮名遣いは「ろう」
「窗外(さうぐわい)」の新仮名遣いは「そうがい」


●現代語訳:

 題:「春の終わりにふと思いついて出来た漢詩です」

 桜の老木と夕日は、刻々と動き過ぎてゆく春を送り、
 胸の内は暫く詩の書物に親しむ気持ちを留めていました。

 幾片もの紅色の花びらを飄(ひるがえ)して、時は去っていこうとしていて、
 多くの枝が緑の葉を繁らせて、影が今まさに整おうとしている所でした。

 私は無駄に実際の応用を求める、苦しい境遇の者であり、
 次第にわずかの手柄を得る、骨折り苦労する人なのです。

 齷齪(あくせく)する普段の生活の中、窓の外を見れば、
 誰が知るでしょうか、何物が未だ塵となっていないのを。


●語注:

(以下、『新字源』は1994年(平成六年)十一月十日の改訂版を引用しています。)

※晩春(ばんしゆん)(小書き文字を使うと「ばんしゅん」):「春の終わり。春の末。」(『goo国語辞書』の「晩春」の検索結果 < http://dictionary.goo.ne.jp/jn/181312/meaning/m0u > より(アクセス日:平成二十九年四月十八日(火)))

※偶成(ぐうせい):「ふと思いついてできる。また、その作品。」(『新字源』P74)

※老桜(老櫻)(ろうおう(らうあう)):「年を経た桜。桜の老木。」(『Weblio辞書』の「老桜」の検索結果 < http://www.weblio.jp/content/%E8%80%81%E6%A1%9C > のうち、『三省堂・大辞林』の検索結果より(アクセス日:平成二十九年四月十八日(火)))

※残日(殘日)(ざんじつ):「夕日。しずもうとする太陽。」(『新字源』P543)

※徂春(そしゆん)(小書き文字を使うと「そしゅん」):「刻々と動き過ぎてゆく春をいう。」(『Weblio辞書』の「徂春」の検索結果 < http://www.weblio.jp/content/%E5%BE%82%E6%98%A5 > のうち、『季語・季題辞典』の検索結果より(アクセス日:平成二十九年四月十八日(火)))

※詩巻(詩卷)(しかん(しくわん)):「詩の書物。」(『新字源』P927)

※実用(實用)(じつよう):「①実際の用途。②実際に応用する」(『新字源』P274)(ここでは、②の意味で用いています。)

※窮途(きゆうと)(小書き文字を使うと「きゅうと」):「行きづまりの道。転じて、苦しい境遇。特に仕官の道を得ないこと。」(『新字源』P743)

※寸功(すんこう):「わずかのてがら。自分の功績をけんそんして言う。」(『新字源』P285)

※労苦(勞苦)(ろうく(らうく)):「ほねおりをする。」(『新字源』P285)

※握齪(あくさく):「心のせまいさま。こせこせするさま。あくせく。」(『新字源』P422)

※平生(へいぜい):「日ごろ。ふだん。つねづね。」(『新字源』P322)


●解説:

 今回は、春の終わりにふと思いついたことを、七言律詩の漢詩にしてみました。

春の終わりの頃の散り行く桜の花と、私自身の数か月間の生活を対比するように詠んでいました。ここ最近の自然の風景と、私の再び職業を求めて動き出した儚い人生とが重ね合わさったように感じられます。

 長らく資格取得のための勉強に力を入れるためにブログと漢詩をお休みしていました。先月には日商簿記二級の試験に合格しました。更に資格取得のための勉強はこれからも続いていきますが、漢詩を忘れてしまわないためにも、無理の無い範囲で漢詩を続けていくことにしました。最近の風景を眺める中で、私自身の儚い人生も常々自覚されるようになってきていますが、それでも何とかきちんと前を向いて生きていけるように頑張っていきます。


佐村 昌哉(筆名:白川 玄齋)

この記事へのコメント

  • 美泥

    美舟&泥舟でございます〜
    まずは 合格おめでとうございます
    そしてお疲れ様でした
    漢詩もマイペースで楽しまれてくださいね^^
    私たちもボチボチ続けております。
    2017年04月23日 00:03
  • 佐村 昌哉(筆名:白川 玄齋)

    >美泥さん

    こんばんは。温かいコメントをありがとうございます。
    本当に合格して嬉しいです。
    更に上の級も目指しながら、
    マイペースで漢詩も頑張っていきます。

    桜の時機が終わって丁度過ごしやすい気候ですので、
    元気に過ごしていければ良いなと思います。
    少しでも塵で終わらないように、
    マイペースで努力をしていきます。
    2017年04月24日 19:15