漢詩「初夏登山」(七言律詩)

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●原文:

 初夏登山  玄齋 佐村 昌哉  大阪市

驛 舍 薰 風 氣 爽 然  固 持 行 李 眺 靑 天

芙 蓉 山 麓 羣 生 美  躑 躅 巖 巒 繚 亂 娟

吟 步 深 溪 新 綠 裏  贊 嘆 絶 境 晩 暉 前

歸 途 遠 客 怡 怡 去  饒 舌 將 成 詩 一 篇


●書き下し文:

 題:「初夏(しよか) 登山(とざん)」

驛舍(えきしや)の薰風(くんぷう) 氣(き) 爽然(さうぜん)たり
固(かた)く行李(かうり)を持(も)ちて靑天(せいてん)を眺(なが)む

芙蓉(ふよう)の山麓(さんろく) 羣生(ぐんせい) 美(び)なり
躑躅(てきちよく)の巖巒(がんらん) 繚亂(れうらん) 娟(けん)なり

吟步(ぎんぽ)す深溪(しんけい) 新綠(しんりよく)の裏(うち)
贊嘆(さんたん)す絶境(ぜつきやう) 晩暉(ばんき)の前(まへ)

歸途(きと) 遠客(ゑんかく) 怡怡(いい)として去(さ)り
饒舌(ぜうぜつ) 將(まさ)に成(な)さんとす詩(し) 一篇(いつぺん)

「驛」の新字体は「駅」、「舎」の新字体は「舍」、「薰」の新字体は「薫」、「靑」の新字体は「青」、「羣」の新字体は「群」、「巖」の新字体は「巌」、「亂」の新字体は「乱」、「步」の新字体は「歩」、「溪」の新字体は「渓」、「綠」の新字体は「緑」、「贊」の新字体は「賛」、「歸」の新字体は「帰」、「將」の新字体は「将」
「爽(さう)」の新仮名遣いは「そう」
「行(かう)」の新仮名遣いは「こう」
「繚(れう)」の新仮名遣いは「りよう(小書き文字を使うと「りょう」)」
「境(きやう)」の新仮名遣いは「きよう(小書き文字を使うと「きょう」)」
「前(まへ)」の新仮名遣いは「まえ」
「遠(ゑん)」の新仮名遣いは「えん」
「饒(ぜう)」の新仮名遣いは「じよう(小書き文字を使うと「じょう」)」


●現代語訳:

 題:「初夏の登山の様子を漢詩に詠みました」

 旅の宿に吹く穏やかな初夏の風は、空気が爽やかに感じられ、
 しっかりと旅の荷物を持って、青空を眺めていました。

 蓮の花が山の麓で群がり生えている様子は美しく、
 躑躅(ツツジ)が険しい山で咲き乱れる様子は、美しいものでした。

 詩歌を作りながら、深い谷の初夏の緑の若葉の立ち木がある中を歩いて、
 世間の人々が行き交うことの無い土地の夕方の日の光を前にして、感動して讃めていました。

 帰り道になって、遠くから来た客は楽しんで去り、
 (私は)多弁になって、今まさに詩の一篇が出来上がろうとしていました。


●語注:

(以下、『新字源』は1994年(平成六年)十一月十日の改訂版を引用しています。)

※駅舎(驛舍)(えきしや)(小書き文字を使うと「えきしゃ」):「宿場のはたごや。宿場のやど。」(『新字源』P1124)

※旅籠屋(はたごや):「近世、旅行者を宿泊させる食事付きの宿屋。」(Webサイト『goo国語辞書』の「旅籠屋」の検索結果 < https://dictionary.goo.ne.jp/jn/176641/meaning/m0u/ > (アクセス日:平成二十九年四月二十八日(金)))

※薫風(薰風)(くんぷう):「おだやかな初夏の風。青葉をふいてくる風。」(『新字源』P873)

※爽然(そうぜん(さうぜん)):「さわやかなさま。」(『新字源』P250)

※行李(こうり(かうり)):「旅行用の荷物。」(『新字源』P898)

※青天(靑天)(せいてん):「あおぞら。」(『新字源』P1091)

※芙蓉(ふよう):「はすの花。」(『新字源』P844)

※群生(羣生)(ぐんせい):「群がりはえる。」(『新字源』P800)

※躑躅(てきちよく)(小書き文字を使うと「てきちょく」):ここでは「植物の名。つつじ。」(『新字源』P978)のことです。

※巌巒(巖巒)(がんらん):「険しい山。険しい岩山。」(『新字源』P308)

※繚乱(繚亂)(りようらん(れうらん))(小書き文字を使うと「りょうらん」):「咲きみだれるさま。」(『新字源』P792)

※吟歩(吟步)(ぎんぽ):「詩歌をうたいながら、また、詩歌を作りながら歩くこと。」(Web サイト『goo国語辞書』の「吟歩」の検索結果 < https://dictionary.goo.ne.jp/jn/59775/meaning/m0u > (アクセス日:平成二十九年四月二十八日(金)))

※深渓(深溪)(しんけい):「深い谷」(『新字源』P588)

※新緑(新綠)(しんりよく)(小書き文字を使うと「しんりょく」):「夏の初めころの、若葉のつややかな緑色。また、その立ち木。」(Web サイト『goo国語辞書』の「新緑」の検索結果 < https://dictionary.goo.ne.jp/jn/155960/meaning/m0u/ > (アクセス日:平成二十九年四月二十八日))

※絶境(ぜつきよう(ぜつきやう))(小書き文字を使うと「ぜっきょう」):「世間と交通のない土地。」(『新字源』P778)

※賛嘆(贊嘆)(さんたん):「感動してほめる。嘆賞。」(『新字源』P958)

※晩暉(ばんき):「夕方の日の光。」(『新字源』P472)

※帰途(歸途)(きと):「帰り道。」(『新字源』P541)

※遠客(えんかく(ゑんかく)):「遠くから来た客」又は「遠くを旅する人」(Web サイト『Weblio日中中日辞典』の「遠客」の検索結果 < http://cjjc.weblio.jp/%E9%81%A0%E5%AE%A2 > (アクセス日:平成二十九年四月二十八日(金)))

※怡怡(いい):「楽しむさま。和らぎ喜ぶ。」(『新字源』P362)

※饒舌(じようぜつ(ぜうぜつ))(小書き文字を使うと「じょうぜつ」)(=多弁(多辯)(たべん)):「よくしゃべる。おしゃべり。」(『新字源』P1119)

※多弁(多辯)(たべん):「よくしゃべる」(『新字源』P232)


●解説:

 今回は、初夏の登山の様子を、七言律詩の漢詩にしました。

 初夏は若葉の緑が眩しい時期です。そして山の麓では蓮の花が、険しい山では躑躅(ツツジ)が咲く、そして山の夕方の日の光を加えると、とてもカラフルな季節に思いました。そんな自然の風景を楽しみながら山を登る、という雰囲気を漢詩に詠んでみました。

 今は車椅子生活で、登山を実際に楽しむことは無くなりましたが、昔の記憶を元に、季節の花々を思い浮かべて漢詩を作っています。こういう色とりどりな季節の中で、様々な風物を漢詩にしていきながら、体調を整えて普段の勉強を頑張っていきます。


佐村 昌哉(筆名:白川 玄齋)

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