漢詩「夏日海村」(七言律詩)

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●原文:

 夏日海村  玄齋 佐村 昌哉  大阪市

海 村 夏 日 約 朋 行  忘 暑 垂 綸 釣 艇 輕

蒼 顥 仰 看 羣 島 蔚  白 沙 囘 顧 一 山 橫

斜 暉 點 點 星 芒 耀  暮 景 煌 煌 漁 火 明

盪 槳 篙 師 風 力 急  僅 知 涼 味 浪 頭 淸


●書き下し文:

 題:「夏日(かじつ) 海村(かいそん)」

海村(かいそん) 夏日(かじつ) 朋(とも)と約(やく)して行(ゆ)く
暑(しよ)を忘(わす)れ綸(いと)を垂(た)るれば釣艇(てうてい) 輕(かる)し

蒼顥(さうかう) 仰(あふ)ぎ看(み)れば羣島(ぐんたう) 蔚(うつ)として
白沙(はくさ) 囘顧(くわいこ)すれば一山(いちざん) 橫(よこ)たふ

斜暉(しやき) 點點(てんてん)と星芒(せいばう) 耀(かがや)き
暮景(ぼけい) 煌煌(くわうくわう)と漁火(ぎよくわ) 明(あき)らかなり

槳(かい)を盪(うご)かす篙師(かうし) 風力(ふうりよく) 急(きふ)に
僅(わづ)かに涼味(りやうみ)を知(し)りて浪頭(らうとう) 淸(きよ)し

「輕」の新字体は「軽」、「羣」の新字体は「群」、「囘」の新字体は「回」、「橫」の新字体は「横」、「點」の新字体は「点」、「淸」の新仮名遣いは「清」
「釣(てう)」の新仮名遣いは「ちよう(小書き文字を使うと『ちょう』)」
「蒼(さう)」の新仮名遣いは「そう」
「顥(かう)」の新仮名遣いは「こう」
「仰(あふ)ぎ」の新仮名遣いは「仰(あお)ぎ」
「島(たう)」の新仮名遣いは「とう」
「囘(くわい)」の新仮名遣いは「かい」
「橫(よこ)たふ」の新仮名遣いは「橫(よこ)たう」
「芒(ばう)」の新仮名遣いは「ぼう」
「煌(くわう)」の新仮名遣いは「こう」
「火(くわ)」の新仮名遣いは「か」
「篙(かう)」の新仮名遣いは「こう」
「急(きふ)」の新仮名遣いは「きゆう(小書き文字を使うと『きゅう』)」
「僅(わづ)かに」の新仮名遣いは「僅(わず)かに」
「涼(りやう)」の新仮名遣いは「りよう(小書き文字を使うと『りょう』)」
「浪(らう)」の新仮名遣いは「ろう」


●現代語訳:

題:「夏の日の海辺の村に行った時の様子を漢詩に詠みました」

 海辺の村に、夏の日に友人と約束して行きました。
 暑さを忘れて魚釣りをすると、魚を釣る舟も軽やかに感じられました。

 青空を仰ぎ見ると、群がった多くの島の草木がこんもりと茂っている様子が見え、
 海辺の白い砂を振り返って見ると、一つの山が横に連なっているのが見えました。

 夕日の光が差してくると、点々と星の光が輝いていて、
 夕暮れの景色では、きらきらと輝いて、魚を集めるための篝火(かがりび)が明るく感じられました。

 櫂(かい)を船頭が動かすと、風の強さが激しくなり、
 僅かに涼しい感じを知って、波のてっぺんは清らかになっていました。


●語注:

(以下、『新字源』は1994年(平成六年)十一月十日発行の改訂版を引用しています。)

(以下、海外のWebサイトのURLはリンクを防止するために「:(コロン)」を全角にしています。)

※海村(かいそん):「海辺にある村。」(Webサイト『goo国語辞書』の「海村」の検索結果 < https://dictionary.goo.ne.jp/jn/284803/meaning/m0u/ > (アクセス日:平成二十九年六月三日(土)))

※垂綸(すいりん)(綸(いと)を垂(た)る):ここでは、「釣魚。」(Webサイト『漢典(かんてん)』の「垂綸」の検索結果 < http://www.zdic.net/c/2/15/31917.htm > (アクセス日:平成二十九年六月三日(土)))、つまり、「魚を釣る。」という意味です。

※釣艇(ちようてい(てうてい))(小書き文字を使うと「ちょうてい」):「魚をつる舟。」(『新字源』P1037)

※蒼顥(そうこう(さうかう)):「あおぞら。天。蒼天〔そうてん(さうてん)〕。」(『新字源』P866)

※蒼天(そうてん(さうてん)):「①青空。②春の天。春の空。③天帝〔てんてい〕。造物主。」(『新字源』P866)、ここでは①の意味で用いています。

※群島(羣島)(ぐんとう(ぐんたう)):「群がった多くの島。」(Webサイト『goo国語辞書』の「群島」の検索結果 < https://dictionary.goo.ne.jp/jn/65715/meaning/m0u/ > (アクセス日:平成二十九年六月三日(土)))

※蔚(うつ)、ここでは、「草木のこんもりしげるさま。」(『新字源』P868)のことです。

※回顧(囘顧)(かいこ(くわいこ)):「①ふり返って見る。②過去のことをふり返って見る。追想。追懐。回想。」(『新字源』P203)、ここでは①の意味で用いています。

※斜暉(しやき)(小書き文字を使うと「しゃき」):「夕日の光。」(『新字源』P449)

※星芒(せいぼう(せいばう)):「星の光。」(『新字源』P467)

※暮景(ぼけい):「①夕ぐれのけしき。②老境。」(『新字源』P474)、ここでは①の意味で用いています。

※煌煌(こうこう(くわうくわう)):「きらきらと輝くさま。明るく照るさま。」(Webサイト『goo国語辞書』の「煌煌」の検索結果 < https://dictionary.goo.ne.jp/jn/72259/meaning/m0u/ > (アクセス日:平成二十九年六月三日(土)))

※漁火(ぎよか(ぎよくわ)):「いさりび。魚を集めるためのかがり火。」(『新字源』P606)

※篙師(こうし(かうし)):「船頭。水夫。」(『新字源』P757)

※風力(ふうりよく):「①風の力。風の強さ。②みなりとほね組み。風采〔ふうさい〕と骨力。」(『新字源』P1112)、ここでは①の意味で用いています。

※涼味(りようみ(りやうみ))(小書き文字を使うと「りょうみ」):「涼しい感じ。涼しそうな趣。」(Webサイト『goo国語辞書』の「涼味」の検索結果 < https://dictionary.goo.ne.jp/jn/232800/meaning/m0u/ > (アクセス日:平成二十九年六月三日(土)))

※浪頭(ろうとう(らうとう)):「波浪的峰頭。」(Webサイト『漢典(かんてん)』の「浪頭」の検索結果 < http://www.zdic.net/c/a/110/297208.htm > (アクセス日:平成二十九年六月三日(土)))、つまり、「波の峰の頂き、波のてっぺん。」を意味しています。

※峰頭(峯頭)(ほうとう):「①夕ぐれのけしき。②老境。」(『新字源』P474)


●解説:

 今回は、夏の日に海辺の村に行った時の様子を、七言律詩の漢詩にしました。

 今回の七言律詩は、私が所属する漢詩の会の浪速菅廟吟社(なにわかんびょうぎんしゃ)の七月課題の「海村避暑(かいそんひしょ:暑さを避けて海辺の村に行く)」と言う七言絶句(一句目・二句目・七句目・八句目)をまず作り、その後に二組の語呂合わせの句である対句(ついく)を作って(三句目と四句目、五句目と六句目の二組)、七言律詩にしたものです。

 海辺の村で舟に乗って魚釣りをして、魚釣りと海辺の景色を楽しみながら涼む様子を漢詩にしていました。景色は島々の緑が、一つの山が横に連なっている様子が見え、夕方になって星の光や漁火が綺麗に見える、そんな中、船頭が櫂(かい)を動かすと風の強さが激しくなり、涼しさを感じて波のてっぺんが清らかになる、そんな風に漢詩を作っていました。

 海辺の村に行ったのは私が子供の頃のまだ元気だった頃で、その頃を思い出しながら想像を膨らませて漢詩を作っていました。これからも昔の記憶も活用してしっかりと漢詩を作っていけるように、普段の勉強と共に頑張っていきます。


佐村 昌哉(筆名:白川 玄齋)

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