漢詩「初秋偶成」(七言律詩)

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●原文:

 初秋偶成  玄齋 佐村 昌哉  大阪市

搖 落 梧 桐 節 序 移  眼 前 秋 意 最 先 知

書 齋 一 夕 吟 燈 閃  村 巷 三 更 蟲 語 滋

風 拂 修 篁 千 本 籟  信 懷 良 友 百 憂 時

年 年 災 禍 難 堪 處  金 氣 寥 寥 綴 小 詩


●書き下し文:

 題:「初秋(しよしう) 偶成(ぐうせい)」

搖落(えうらく)する梧桐(ごどう) 節序(せつじょ) 移(うつ)り
眼前(がんぜん)の秋意(しうい)最(もつと)も先(ま)づ知(し)る

書齋(しよさい) 一夕(いつせき) 吟燈(ぎんとう) 閃(ひらめ)き
村巷(そんかう) 三更(さんかう) 蟲語(ちゆうご) 滋(しげ)し

風(かぜ) 修篁(しうくわう)を拂(はら)ひて千本(せんぼん)の籟(らい)
信(しん) 良友(りやういう)を懷(おも)ひて百憂(ひやくいう)の時(とき)

年年(ねんねん)の災禍(さいくわ) 堪(た)へ難(がた)き處(ところ)
金氣(きんき) 寥寥(れうれう) 小詩(せうし)に綴(つづ)る

「搖」の新字体は「揺」、「齋」の新字体は「斎」、「燈」の新字体は「灯」、「蟲」の新字体は「虫」、「拂」の新字体は「払」、「懷」の新字体は「懐」、「處」の新字体は「処」、「氣」の新字体は「気」
「秋(しう)」の新仮名遣いは「しゆう(小書き文字を使うと『しゅう』)」
「搖(えう)」の新仮名遣いは「よう」
「先(ま)づ」の新仮名遣いは「先(ま)ず」
「巷(かう)」の新仮名遣いは「こう」
「更(かう)」の新仮名遣いは「こう」
「修(しう)」の新仮名遣いは「しゆう(小書き文字を使うと『しゅう』)」
「篁(くわう)」の新仮名遣いは「こう」
「拂(はら)ひて」の新仮名遣いは「拂(はら)いて」
「良(りやう)」の新仮名遣いは「りよう(小書き文字を使うと『りょう』)」
「友(いう)」の新仮名遣いは「ゆう」
「懷(おも)ひて」の新仮名遣いは「懷(おも)いて」
「憂(いう)」の新仮名遣いは「ゆう」
「禍(くわ)」の新仮名遣いは「か」
「堪(た)へ」の新仮名遣いは「堪(た)え」
「寥(れう)」の新仮名遣いは「りよう(小書き文字を使うと『りょう』)」
「小(せう)」の新仮名遣いは「しよう(小書き文字を使うと『しょう』)」


●現代語訳:

 題:「陰暦七月の秋の初めにふと思い付いて出来た漢詩です」

 梧桐(あおぎり)の葉がひらひらと散って、季節は移っていき、
 それは目の前の秋の気配で最も先に知る所です。

 書斎ではひと晩、詩人の照明用の灯火がぴかぴかと光っていて、
 村の小道では、三更(さんこう)の真夜中(午後十二時の前後二時間ほど)には、虫の鳴き声が多くなっていました。

 風が長く伸びた竹を払って、千本もの竹に風が吹き通る音がして、
 その時は、私は手紙で正直に良いことを話し合える友人のことを思って、種々の心配事をしている時でした。

 毎年の災いは、耐えることが難しい所であり、
 秋の気配を寂しく静かに、短い形式で書かれた詩に綴っていました。


●語注:

(以下、『新字源』は1994年(平成六年)十一月十日発行の改訂版を引用しています。)

(以下、海外のWebサイトのURLは、リンクを防止するため「:(コロン)」は全角にしています。)

※初秋(しよしゆう(しよしう))(小書き文字を使うと「しょしゅう」):「秋の初め。陰暦七月の別称。」(『新字源』P113)

※偶成(ぐうせい):「ふと思いついてできる。また、その作品。」(『新字源』P74)

※揺落(搖落)(ようらく(えうらく)):「物がゆれ落ちる。草木がひらひらと散る。」(『新字源』P425)

※梧桐(ごどう):「あおぎり。落葉高木。皮は緑色、葉は大型。」(『新字源』P507)(梧桐は秋の初めに落葉することで知られています。)

※節序(せつじよ)(小書き文字を使うと「せつじょ」):「季節の移り変わる順序。季節。」(『新字源』P753)

※秋意(しゆうい(しうい))(小書き文字を使うと「しゅうい」):「①秋のけはい。秋の気分。②冷淡なこと。」(『新字源』P730)、ここでは、①の意味で用いています。

※一夕(いつせき)(小書き文字を使うと「いっせき」):「1 ひと晩。一夜(いちや)。2 ある晩。ある夜。」(Webサイト『goo国語辞書』の「一夕」の検索結果 < https://dictionary.goo.ne.jp/jn/13404/meaning/m0u/ > (アクセス日:平成二十九年七月二十二日(土)))、ここでは、1の意味で用いています。

※吟灯(吟燈)(ぎんとう):「詩人的照明用灯。」(『漢語大詞典(かんごだいしてん)』(Webサイト『搜韻(そういん)』の「典故(てんこ)・詞彙(しい)」の「吟燈」の検索結果 < http://sou-yun.com/QueryAllusion.aspx > (アクセス日:平成二十九年七月二十二日(土))))、つまり、「詩人の照明用の灯火。」のことです。

※村巷(そんこう(そんかう)):「①むら。②村の小道。」(『新字源』P491)、ここでは、①の意味で用いています。

※三更(さんこう(さんかう)):夜を五つに分けた第三の時刻。今の午後十二時の前後二時間ほど。(『新字源』P9)

※虫語(蟲語)(ちゆうご):「虫の鳴き声。」のことです。

※修篁(しゆうこう(しうくわう)):「修竹、長竹。」(『漢語大詞典(かんごだいしてん)』(Webサイト『搜韻(そういん)』の「典故(てんこ)・詞彙(しい)」の「修篁」の検索結果 < http://sou-yun.com/QueryAllusion.aspx > (アクセス日:平成二十九年七月二十二日(土))))、つまり、「長く伸びた竹、長い竹。」のことです。

※修竹(しゆうちく(しうちく)):「長い竹。長く伸びた竹。」(『新字源』P345)

※籟(らい):「①ふえ。あなの三つあるふえ。②簫〔しよう(せう)(小書き文字を使うと『しょう』)〕のふえ。③ひびき。音響。風がふき通って発する音。」(『新字源』P760)、ここでは、③の意味で用いています。

※良友(りようゆう(りやういう))(小書き文字を使うと「りょうゆう」):「ためになるよい友人。益友〔えきゆう(えきいう)〕。」(Webサイト『goo国語辞書』の「良友」の検索結果 < https://dictionary.goo.ne.jp/jn/232822/meaning/m0u/ > (アクセス日:平成二十九年七月二十二日(土)))

※益友(益友)(えきゆう(えきいう)):「交わって有益になる友人。それは正直な人、誠のある人、知識の多い人。」(『新字源』P691)〔『論語(ろんご)』「季氏(きし)第十六」の篇の一節にあります。以下の一節です。〕

■原文:

孔子曰、「益者三友、損者三友。友直、友諒、友多聞、益矣。友便辟、友善柔、友便佞、損矣。」

■書き下し文:

孔子(こうし) 曰(いは)く、

「益(えき)なる者(もの)、三友(さんいう)あり、損(そん)なる者(もの)、三友(さんいう)あり。直(ちよく)を友(とも)とし、諒(まこと)を友(とも)とし、多聞(たぶん)を友(とも)とせば、益(えき)なり。便辟(べんぺき)を友(とも)とし、善柔(ぜんじう)を友(とも)とし、便佞(べんねい)を友(とも)とせば、損(そん)なり。」

「益」の新字体は「益」
「柔(じう)」の新仮名遣いは「じゆう(小書き文字を使うと『じゅう』)」

■現代語訳:

 孔子(こうし)は、次のように申しました。

「交わって有益な人に、三種類の友人がいて、交わって損をする人に、三種類の友人がいます。正直で、自分の過ちを正してくれる人を友人とし、心に誠があって、その誠を進めていく人を友人とし、知識が多く、明るい道を進む人を友人とすれば、有益なのです。しかしながら、媚び諂って人の機嫌を取る人を友人としたり、顔付きは穏やかであるが誠意のない人を友人としたり、口先が上手くて、心に誠が無い人を友人とすれば、損なのです。

(正直に良いことを語り合える友人関係が大切なのです。)」

と。


※便辟(べんぺき):「こびへつらって、人のきげんをとる。また、その人。」(『新字源』P66)

※善柔(ぜんじゆう(ぜんじう))(小書き文字を使うと「ぜんじゅう」):「顔つきがおだやかであるが誠意のない人。」(『新字源』P189)

※便佞(べんねい):「口先がうまくて、心に誠が無い。」(『新字源』P66)

※百憂(ひやくゆう(ひやくいう)):「種種憂患或憂思。」(Webサイト『漢典(かんてん)』の「百憂」の検索結果 < http://www.zdic.net/c/e/e3/228069.htm > (アクセス日:平成二十九年七月二十二日(土)))、つまり、「種種の心配事や、或いは悲しむ心。」のことです。

※憂患(ゆうかん(いうくわん)):「うれえる。うれい。心配ごと。」(『新字源』P386)

※憂思(ゆうし(いうし)):「うれい、悲しむ心。」(Webサイト『goo国語辞書』の「憂思」の検索結果 < https://dictionary.goo.ne.jp/jn/224182/meaning/m0u/ > (アクセス日:平成二十九年七月二十二日(土)))

※年年(ねんねん):「年ごと。毎年。」(Webサイト『goo国語辞書』の「年年」の検索結果 < https://dictionary.goo.ne.jp/jn/171071/meaning/m0u/ > (アクセス日:平成二十九年七月二十二日(土)))

※災禍(さいか(さいくわ)):「わざわい。」(『新字源』P616)

※金気(金氣)(きんき):「①金属の気。②秋のけはい。五行思想によれば、金は秋の季節に配当される。」(『新字源』P1014)、ここでは、②の意味で用いています。

※寥寥(りようりよう(れうれう)):「①さびしくて静かなさま。②まばらなさま。③空虚なさま。」(『新字源』P284)、ここでは、①の意味で用いています。

※小詩(しようし(せうし))(小書き文字を使うと「しょうし」):「短詩。」(『漢語大詞典(かんごだいしてん)』(Webサイト『搜韻(そういん)』の「典故(てんこ)・詞彙(しい)」の「小詩」の検索結果 < http://sou-yun.com/QueryAllusion.aspx > (アクセス日:平成二十九年七月二十二日(土))))、つまり、「短い形式で書かれた詩。」のことです。

※短詩(たんし):「短い詩。短い形式で書かれた詩。」(Webサイト『goo国語辞書』の「短詩」の検索結果 < https://dictionary.goo.ne.jp/jn/139990/meaning/m0u/ > (アクセス日:平成二十九年七月二十二日(土)))


●解説:

 今回は、陰暦七月の秋の初めにふと思い付いて出来た七言律詩の漢詩です。

 秋の初めには梧桐(あおぎり)が落葉し、季節の移り変わりを感じ、書斎ではひと晩灯火を燃やし続け、真夜中の村の小道では虫の鳴き声が多くなり、風が吹いて千本もの多くの竹に風が吹き通る音がして、手紙の中で正直に良いことを話し合える友人のことを思って、種々の心配事をして、毎年の災いに耐えることが難しくなる中で、秋の気配を寂しく静かに短い形式の詩に綴っていた、という風に思い浮かべて漢詩を作っていました。

 今年も水害が多く、災害のあった地域の心配をすることも多いです。出来れば毎年の災害が無いように、或いはもし災害があった時は、せめて被害が小さくなるようにと願っています。災害のあった地域が早くに復旧できるようにと願っています。

 私は病気の身の上で何が出来るのかをしっかりと把握しながら、普段の努力を重ねていきます。毎年の検査入院の日まであと僅かですので、体調もきちんと整えて頑張っていきます。


佐村 昌哉(筆名:白川 玄齋)

この記事へのコメント

  • 泥舟

    もう秋の作品ですか。
    一足早いですね^^
    私はふこ先生に8月分まで提出し終えたところです
    私は読み方が苦手で どうもうまく出来ません
    こうして沢山の勉強をすると 自ずとわかってくるのでしょうね
    すごい努力家なんだなあといつも尊敬しています

    近年の災害は何をとっても大きいですよね
    プラス 人間が引き起こした事故も大きいように思います
    どちらにしても 恐ろしい事です
    安全を願うばかりですね

    暑いので無理なきよう どうぞご自愛くださいまして
    漢詩に取り組んでくださいね
    2017年07月29日 23:54
  • 佐村 昌哉(筆名:白川 玄齋)

    > 泥舟さん

    おはようございます。温かいコメントをありがとうございます。

    私も入門して最初の半年ほどは大変作詩に苦しみました。
    そんな時には思い切って作っていけば良いのだということが分かり、
    何とか気合を入れ直して漢詩を一首作る、という状況でした。

    今の七言律詩を作るように変わってからも結構同じようなもので、
    何とか思い切ってえいやっと作ってみよう、
    そんな気持ちになって、ようやく漢詩が出来ることも多いです。
    気合を何とか入れて漢詩を作っていこうと思います。
    (毎回、こんな調子なのです。。。)

    それでも梧桐が秋の最初に葉を落とすなどのことは、
    以前に菅廟吟社で課題詩の題に出てから学んだことです。
    何年も繰り返していく中で、蓄積されるものもあるのだと思います。

    そして今回は秋を先取りしてみました。
    秋の頃も同様に災害を心配して遠方のことを思っているのでは、
    そんな気持ちを詠んでいました。
    あれほどに大量の木が流れてくると、川の流れも止まるのだと、
    新たに知りました。すぐ近くに山がある所では、
    そんな危険もあるのだなと思いました。
    天災は恐れつつも、人間がその害を大きくしないように、
    常にそうであるようにと願っています。

    はい。来月は検査入院ですので、
    暑さから体調を崩さないように気を付けて
    入院に臨むようにします。
    これからもマイペースできちんと漢詩に取り組んでいきます。

    良い月曜日の一日をお過ごし下さい。
    2017年07月31日 09:43