漢詩「秋日偶成」(七言律詩)

●原文:
秋日偶成 玄齋 佐村 昌哉 大阪市

深憶浮生行路難 可親淨几一燈寒

詩懷睡意終無就 吟酌煩襟聊自寬

天降雨絲幽處寂 秋含露氣暗蛩酸

僅晴銀漢雲間在 切切琴線月下彈


●書き下し文:

題:「秋日(しうじつ) 偶成(ぐうせい)」

深(ふか)く憶(おも)ふ浮生(ふせい)の行路(こうろ)の難(かた)きを
親(した)しむべし淨几(じやうき)の一燈(いつとう) 寒(さむ)きを

詩懷(しくわい) 睡意(すいい) 終(つひ)に就(な)ること無(な)く
吟酌(ぎんしやく) 煩襟(はんきん) 聊(いささ)か自(おのづか)ら寬(ゆる)うす

天(てん)は雨絲(うし)を降(ふ)らせて幽處(いうしよ) 寂(せき)たり
秋(あき)は露氣(ろき)を含(ふく)みて暗蛩(あんきよう) 酸(さん)たり

僅(わづ)かに晴(は)れて銀漢(ぎんかん) 雲間(うんかん)に在(あ)り
切切(せつせつ) 琴線(きんせん) 月下(げつか)に彈(だん)ず

「淨」の新字体は「浄」、「燈」の新字体は「灯」、「懷」の新字体は「懐」、「寬」の新字体は「寛」、「絲」の新字体は「糸」、「處」の新字体は「処」、「氣」の新字体は「気」、「彈」の新字体は「弾」
「秋(しう)」の新仮名遣いは「しゆう(小書き文字を使うと『しゅう』)」
「憶(おも)ふ」の新仮名遣いは「憶(おも)う」
「淨(じやう)」の新仮名遣いは「じよう(小書き文字を使うと『じょう』)」
「懷(くわい)」の新仮名遣いは「かい」
「終(つひ)に」の新仮名遣いは「終(つい)に」
「自(おのづか)ら」の新仮名遣いは「自(おのずか)ら」
「僅(わづ)か」の新仮名遣いは「僅(わず)か」



●現代語訳:

題:「秋の日にふと思い付いて出来た漢詩です」

深く儚い人生の世渡りの苦しみを思い、
塵一つ無い机の、一つの寒々しい灯下に親しむことが出来ました。

詩を思う気持ちから、眠気がしても遂に眠ることが無く、
詩歌を歌いながら酒を酌み、胸の内は暫く自然に寛(ゆる)やかになっていました。

天は糸のような細かい雨を降らせて、世を避けた静かな住まいはひっそりとしていて、
秋は湿気を含んで、どこからともなく鳴くコオロギの悲しく感じられました。

僅かに晴れてきて、天の川が雲の間に見えてきて、
その音色がひしひしと胸に迫るように、琴の絃を月の下で弾いていました。


佐村 昌哉(筆名:白川 玄齋)

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