漢詩「初秋墓参」(五言排律)

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●原文:

 初秋墓參  玄齋 佐村 昌哉  大阪市

掃 墓 新 秋 候  長 途 促 織 吟

悠 悠 寬 運 足  步 步 漸 澄 心

喧 譟 過 街 巷  靜 閑 臻 梵 林

靈 前 陳 密 意  雲 外 啓 愁 襟

滴 草 繁 風 露  趨 時 隔 古 今

新 詩 綴 情 實  誦 詠 酒 杯 深


●書き下し文:

 題:「初秋(しよしう) 墓參(ぼさん)」

掃墓(さうぼ) 新秋(しんしう)の候(こう)
長途(ちやうと) 促織(そくしよく) 吟(ぎん)ず

悠悠(いういう) 寬(ゆる)やかに足(あし)を運(はこ)び
步步(ほほ) 漸(やうや)く心(こころ) を澄(す)ます

喧譟(けんさう)の街巷(がいかう)を過(す)ぎ
靜閑(せいかん)なる梵林(ぼんりん)に臻(いた)る

靈前(れいぜん) 密意(みつい)を陳(の)べ
雲外(うんぐわい) 愁襟(しうきん)を啓(ひら)く

草(くさ)に滴(したた)りて風露(ふうろ)を繁(しげ)くし
時(とき)に趨(はし)りて古今(ここん)を隔(へだ)つ

新詩(しんし) 情實(じやうじつ)を綴(つづ)り
誦詠(しようえい) 酒杯(しゆはい) 深(ふか)し

「參」の新字体は「参」、「寬」の新字体は「寛」、「步」の新字体は「歩」、「靜」の新字体は「静」、「靈」の新字体は「霊」、「實」の新字体は「実」
「秋(しう)」の新仮名遣いは「しゆう(小書き文字を使うと『しゅう』)」
「掃(さう)」の新仮名遣いは「そう」
「長(ちやう)」の新仮名遣いは「ちよう(小書き文字を使うと『ちょう』)」
「悠(いう)」の新仮名遣いは「ゆう」
「漸(やうや)く」の新仮名遣いは「漸(ようや)く」
「譟(さう)」の新仮名遣いは「そう」
「巷(かう)」の新仮名遣いは「こう」
「外(ぐわい)」の新仮名遣いは「がい」
「愁(しう)」の新仮名遣いは「しゆう(小書き文字を使うと『しゅう』)」
「情(じやう)」の新仮名遣いは「じよう(小書き文字を使うと『じょう』)」


●現代語訳:

 題:「陰暦七月の秋の初めにお墓参りをする様子を、漢詩に詠みました」

 お墓参りをする陰暦七月の秋の初めの時節であり、
 長い道のりでは、コオロギが鳴いていました。

 のんびりと緩やかに足を運んで、
 その一歩一歩で、次第に心が清らかに澄んできました。

 騒がしい街を過ぎていくと、
 物静かなお寺に着きました。

 死者の霊を祭った場所の前で秘密の気持ちを述べ、
 雲の彼方に愁える気持ちを打ち明けていました。

 草に滴って風と露が多くなり、
 時代の傾向に従って、昔と今が遠ざかっていました。

 新しく作った漢詩には、ありのままの事実を綴り、
 節を付けて漢詩を歌うと、酒の杯が深く感じられました。


●語注:

(以下、『新字源』は、1994年(平成六年)十一月十日発行の改訂版を引用しています。)

(以下、海外のWebサイトのURLは、リンクを防止するために、「:(コロン)」を全角にしています。)

※初秋(しよしゆう(しよしう))(小書き文字を使うと「しょしゅう」):「秋の初め。陰暦七月の別称。」(『新字源』p.113)

※掃墓(そうぼ(さうぼ)):「墓参りする。」(『新字源』p.420)

※新秋(しんしゆう(しんしう)):(小書き文字を使うと「しんしゅう」)「1 秋の初め。初秋。2 陰暦七月の異称。」(Webサイト『goo国語辞書』の「新秋」の検索結果 < https://dictionary.goo.ne.jp/jn/114422/meaning/m0u/ > (アクセス日;平成二十九年八月三十日(水)))、ここでは、「初秋(しよしゆう(しよしう))(小書き文字を使うと『しょしゅう』)」と同じ意味で用いています。

※長途(ちようと(ちやうと))(小書き文字を使うと「ちょうと」)(=長程(ちようてい(ちやうてい))(小書き文字を使うと「ちょうてい」)):「遠い道のり。長い旅。」(『新字源』p.1054)

※促織(そくしよく)(小書き文字を使うと「そくしょく」):「こおろぎ。はたおりむし。寒くなる機織りを急げと鳴く意。」(『新字源』p.65)

※悠悠(ゆうゆう(いういう)):「①うれえるさま。②遠くはるかなさま。③ひまのあるさま。のんびりしたさま。④行くさま。広く行きわたるさま。⑤多いさま。⑥旗などのたれさがっているさま。⑦とりとめのないさま。」(『新字源』p.374)、ここでは、③の意味で用いています。

※歩歩(步步)(ほほ):「ひとあしひとあし。一歩一歩。」(『新字源』p.539)

※澄心(ちようしん)(小書き文字を使うと「ちょうしん」)(心(こころ)を澄(す)ます):「①心を清く澄ませる。②清く澄んだ心。」(『新字源』p.609)

※喧譟(けんそう(けんさう)):「やかましい。さわがしい。」(『新字源』p.189)

※街巷(がいこう(がいかう)):「まち。ちまた。」(『新字源』p.898)

※静閑(靜閑)(せいかん):「もの静か。」(『新字源』p.1092)

※梵林(ぼんりん):「佛寺。」(『漢語大詞典(かんごだいしてん)』(Webサイト『搜韻(そういん)』の「典故(てんこ)・詞彙(しい)」の「梵林」の検索結果 < http://sou-yun.com/QueryAllusion.aspx > (アクセス日:平成二十九年八月三十日(水))))、つまり、「お寺。」のことです。

※仏寺(佛寺):「てら。」(『新字源』p.44)

※霊前(靈前)(れいぜん):「死者の霊を祭った場所の前。」(Webサイト『goo国語辞書』の「霊前」の検索結果 < https://dictionary.goo.ne.jp/jn/234259/meaning/m0u/ > (アクセス日:平成二十九年八月三十日(水)))

※密意(みつい):「秘密の心。」(『新字源』p.306)

※雲外(うんがい(うんぐわい)):「雲よりも上。雲の向こう側。雲のかなた。」(『新字源』p.1083)

※愁襟(しゆうきん(しうきん))(小書き文字を使うと「しゅうきん」):「うれえる心。寂しい気持ち。」(『新字源』p.381)

※風露(ふうろ):「風とつゆ。」(『新字源』p.1112)

※趨時(すうじ)(時(とき)に趨(はし)る):「時勢を追う。時勢に従う。そのときどきに応じる。」(『新字源』p.969)

※時勢(じせい):「時代のなりゆき。時代の傾向。」(『新字源』p.468)

※古今(ここん):「①むかしと今。今古。②むかしから今まで。」(『新字源』p.160)

※新詩(しんし):「新的詩作。」(『漢語大詞典(かんごだいしてん)』(Webサイト『搜韻(そういん)』の「典故(てんこ)・詞彙(しい)」の「新詩」の検索結果 < http://sou-yun.com/QueryAllusion.aspx > の(1)(アクセス日:平成二十九年八月三十日(水))))、つまり、「新しく漢詩を作ること。」を意味しています。

※詩作(しさく):「詩を作ること。古くは、特に漢詩を作ること。」(Webサイト『goo国語辞書』の「詩作」の検索結果 < https://dictionary.goo.ne.jp/jn/95978/meaning/m0u/ > (アクセス日:平成二十九年八月三十日(水)))

※情実(情實)(じようじつ(じやうじつ)):「①ありのままの事実。真相。②いつわりのない心。まこと。」(新字源)

※誦詠(しようえい):「節をつけて詩歌を歌う。誦詩。」(『新字源』p.931)


●解説:

 今回は、陰暦七月の秋の初めにお墓参りをする様子を、五言排律(ごごんはいりつ)の漢詩に詠んだものです。

 陰暦七月の秋の初めの時節にお墓参りをし、長い道のりではコオロギが鳴いていて、のんびりと歩く一歩一歩で、心が清らかに澄んできて、騒がしい街を過ぎて物静かなお寺に着き、死者の霊を祭った場所の前で秘密の気持ちを述べ、雲の彼方に愁える気持ちを打ち明けていて、草に滴って風と露が多くなり、時代の傾向に従って昔と今が遠ざかっており、新しく作った詩にありのままの事実を綴り、節を付けて漢詩を歌うと、酒の杯が深く感じられた、という風な情景を思い浮かべて漢詩を作っていました。

 今は車椅子での移動ですが、お墓までの道のりで心が清らかになってくるのを感じます。お墓に行くと素直な気持ちになって本当の気持ちをお墓で語りかけて、それで心が少し軽くなるのを感じます。出来る限り愚痴を人に語らないようにするためにも、こういう機会は大切だなと思います。

 これからも私自身の気持ちを大切にして、漢詩や填詞を作っていければ良いなと思います。これからも体調を整えて頑張っていきます。


佐村 昌哉(筆名:白川 玄齋)

この記事へのコメント

  • 泥舟

    この漢詩が面白いと思ったのは
    密意 というところです
    私にはそんな発想がありませんが 何ともすごい漢詩です
    というのも 一体 秘密の気持ちって何だろう
    愚痴って何だろう?と もう一歩踏み混んでしまう作品です
    さすがですね!
    2017年09月01日 22:42
  • 佐村 昌哉(筆名:白川 玄齋)

    > 泥舟さん

    こんばんは。温かいコメントをありがとうございます。

    お墓参りに行くと、いつも私が普段考えていることを
    話す時があります。それはいろんな不満であったり、
    愚痴であったりする時が多いのです。

    この言葉をそのまま「愚痴(愚癡)」として
    漢詩に使うには穏やかでないと思いましたので、
    詩語を調べていって「密意」としたわけです。

    愚痴を人に話して相手が困ってしまうことがありましたので、
    出来る限りお墓で話すようにと思っています。
    父のカラオケの十八番の歌の歌詞に出てくるように、
    酒場の隅に置いて行く程、最近はお酒を飲んでいませんので、
    私にはお墓が適当かなと思っています。

    父があの世でどんな表情をしているかは気になりますが。。。

    普段考えていることをこうして漢詩にするのは
    作っている中での楽しみです。
    こういう体験をこれからも少しずつでもしていければ良いな。
    と思っています。これからも体調に気を付けて頑張ります。

    良い火曜日の夜をお過ごし下さい。
    2017年09月05日 21:10